渋谷洋樹監督 就任記者会見
8月18日(木)渋谷洋樹監督の就任記者会見を行いました。
株式会社ジュビロ 代表取締役社長 小野勝
本日は急なご案内にもかかわらず、お集まりいただきありがとうございます。本日は渋谷新監督の就任に至った経緯を私の方からご説明差し上げます。
まず昨年のJ2優勝を受けて、最低限J1残留、そして一つでも上の順位を目指して、戦術的な部分でしっかりとした考え方を持ちながら、前チームで若手の選手育成で目を見張る実績を持った伊藤前監督を招聘して今シーズン闘っていくと決めてきました。
しかし、25節時点で5勝7分け13敗、18位で最下位と非常に苦しい結果となりました。
我々としては、生みの苦しみというか新しいことにチャレンジしていく中で、最後まで見ていってもらおうと、鈴木秀人前トップチームマネジメント部長とも会話しながら積み上げをレベルアップさせていくんだと。
ただ浦和戦の一つの負けが大きなインパクトになってしまいました。0-6というスコアもさることながら、選手達が一丸になって戦うという姿勢を見せられなかったことが、非常に大きな理由になります。終わってすぐ、この状況でこの先戦えるのかと。そういう中で、今のチームの中にカンフル剤を入れる必要があると。しかし今まで積み上げてきたものを唐突に壊してしまうことは逆に危険です。そういったことを踏まえていろんな検討の結果、ヘッドコーチをしていただいていた渋谷さんに監督をお願いすることになりました。
渋谷さんは、監督経験も豊富です。大宮をJ2優勝に導いたこともありますし、J1でも5位とクラブ最高の成績も収めています。その他のクラブにも移りながら、戦術はポゼッションもあればカウンタータイプもある。それをいろんな選手達を見極めながら作り上げてきた経験もお持ちです。キャンプから積み上げてきた今の形をどう変化させて残留を勝ち取るのか、最短を選ぶという意味で渋谷監督にお願いすることにしました。
残り9戦。残留圏15位とは3点差です。一つ勝てば上に、一つ負ければ追い抜かれる。非常に厳しい今年のJ1の中で、なんとしても残留を勝ち取るというためにはもう一度チーム一丸となって戦う。その姿勢を内にも外にも見せながら、皆さんから後押ししてもらう。そういう意味で渋谷監督を選ばせてもらいました。チーム一丸となって支えていきます。応援よろしくお願いいたします。
ジュビロ磐田 監督 渋谷洋樹
この度ジュビロ磐田の監督になりました渋谷洋樹です。よろしくお願いいたします。私がこうして話すということは、監督が解任になり私自身も本望ではありませんし、クラブ全体としても本望ではないのですが、この勝負の世界ではこういうこともありますので、クラブの目標もしっかりと達成できるように、我々クラブに関わる人達の想いもしっかりと持ち、これからの9戦を一戦必勝、全戦全勝でしっかりと勝利できるように最高の準備をしてゲームに臨んでいき、最後にはしっかりとみんなで笑って終えられるように私自身、選手・スタッフ共に一体となって、皆さんに勝利を送りたいなというように思っています。
この苦しい状況ですけれども、このときだからこそ、ファン・サポーターの皆様には、我々を後押ししていただきたいと思います。一戦一戦、我々は死に物狂いで闘いますので、今年残り9戦、皆さんよろしくお願いいたします。
渋谷洋樹 監督 質疑応答
――伊藤前監督は残留ラインを「勝点35~40」としていましたが、渋谷監督はどう考えていますか?
そのぐらいの争いになるのではないかと私も思っています。40に達するかどうかわかりませんが、たぶんそこに近いところでの争いになるのではないかと、各チームの勝利数を見ると、なかなかそこまで上がってきていないチームが多いのを見ると、そのぐらいがラインではないかと思います。
――今年一度も連勝がない中で、勝点35~40には最低でも5勝が必要ですが、残り9試合での方策は?
5勝するのか、4勝3分か、というものも含めて、私自身とにかく勝利を目指して一試合一試合向かって行かなければ、勝点1も取れないと思っています。一戦必勝しながらでも、慌てずプレーして、勝点1でもとるという残留のための戦い方という、二つの柱を持っていないと。勝点をとるためにどのように試合に入るか、ボールを動かせるときはどう動かすか、動かせないときはカウンターを狙う、そうやってゲームを読みながらやっていくことが勝点につながると思っているので、まずはその試合で勝点をしっかり取り続けるということです。最後に勝点1で残留が決まる可能性もありますし、我慢をしながら戦う試合もあるんじゃないかと思うので、そこをしっかり見極めてやっていきたいなと思っています。
――基本的には伊藤前監督のサッカーを継承するということですが、どんなサッカーをしていきますか?
まずは攻撃について、立ち位置によって相手のプレッシャーを受けずにボールをしっかりと動かす、そこの相手のプレッシャーを感じ取って全員が動き出すという形は基本的に継続しながらも、なかなかそれが得点にならなかったので、そこからのイメージの共有をもう一度、ここ数試合で負けが続いているだけに、選手たちはその部分で少しずつリスクを背負わなくなっているのかなというのは感じています。思い切ったアグレッシブな、前への意識を少し多めに持って戦うことが必要なんじゃないかなと思うので、しっかりとした立ち位置の優位性は持ちながら、戦いに行きたいと。伊藤前監督も常にそこを意識してやっていましたし、幅をとる、高さをとる、それでスペースを得る、そこをどう動いて、相手をどう動かして背中をとってゴールを決める。イメージとしてはそういう形でやっているので、そこにプラスして、あとは残留争いの中でそれをスタートからやるか、最初はまずは相手の背後をとってシンプルにプレーをするか、ということを見極めてやっていきたいと思います。
――伊藤前監督時代に出場機会が少なかった選手の起用は?
この名古屋戦に向けて、コンディション、チームの戦い方を含めて選手の選考をしているので、もちろん外れた選手は納得いかないかもしれませんが、メンバーについてはしっかりと見極めながら戦いに行っています。古川選手も良くなっていますし、ドゥドゥ選手も慣れてきていますし、そういうなかなか出られなかった選手をこれから使っていくことは可能かなと思いますが、私が監督になって急に出れるようになった選手、出られなくなった選手、といったはっきりしたことはなかなかないかなと思います。逆に言えば、彼らが活躍できるような形になれば、またチームのプラスになるので、名古屋戦が終わって試合間隔が開きますし、そこでまた新しい力が出てくると、また自分たちの目標に近づいていけるのかなと思います。
――いつ渋谷監督自身に就任の要請があったのか、そのときの想い、決断に至った理由は?
要請があったのは月曜日(8月15日)です。監督として今リストアップされているけど、その場合はどうですかというのは聞かれました。私自身も伊藤前監督がやってきたこと、ジュビロがやろうとしていたこと、それに僕は賛同して伊藤前監督と共にここにお世話になっているので、「この形をしっかりと証明したい」という思いが強くて、私自身からやらせて欲しいという形でお話をさせていただきました。なかなか結果が出ない中で皆さんももどかしさ、悔しさ、いろんなものは持っていたと思いますので、何とか私が少しでも皆さんの気持ちが晴れるような戦い方ができて、なおかつ目標を達成させられれば、という想いが凄くあったので、自分自身からそこでやりたいと。オフ明け一日目の練習を見て、選手たちの顔を見て、この素晴らしい選手達ととにかく最後の闘いを繰り広げて、最後には笑いたいなと強く思ったので、自分からお願いしました。
――改めて監督となったことで選手に話したことは?
自分たちが試合で戦うことができるのは、支えてくれる人たち、クラブスタッフもそうですし、スポンサーの方もそうですし、たくさんの方々が背中にいると。その方たちが後押ししてくれているし、その方たちが幸せになるように我々は戦いに挑んでいるので、その重さというか、それを背負って今後闘っていこうと。そういうことをみんなに伝えました。我々の結果によってクラブスタッフ、スポンサーの方、いろんな方が喜び合えるとか、もちろん負けて悲しむとか、いろんな方たちの想いがいろんなところに詰まっているので、とにかく我々がしっかり勝って、最後皆さんで喜び合えるように闘おうということを選手に今日話しました。
――こういうときに監督を引き受けてくれてありがとうという言葉もサポーターから届いています。サポーターの皆さんに向けて、渋谷監督からメッセージを。
まずは皆さんに、なかなかこのリーグ戦で思った結果が出ず、本当に申し訳ございません。ただ、我々ジュビロ磐田の選手達、スタッフも含めて、必ず勝利できるという確信をしています。厳しい状況からのし上がっていく、這い上がっていくには、皆さんの声援が本当に後押しになりますので、ぜひ明日はたくさんの声援を送っていただきたいと思いますし、またホームでも、コロナで声は出せませんけれども、心の中で声援を送っていただいて、我々最後まで必死になって闘って参りますので、我々を後押ししていただいて、皆さんと喜びを分かち合いたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
――渋谷監督の表情に、監督として采配を振るうという覚悟を感じます
私自身、伊藤前監督とともに磐田さんにお世話になっているので、この結果について凄く責任を感じています。それでもクラブは、伊藤前監督が退いた後に私を監督として置いて指揮を執らせてくれるということは、少なからず期待というか、伊藤前監督のやってきたことを継続して勝利に繋げられるというふうに思ってもらえていることに、凄く感謝しています。普通であるならば他の方が来て監督を、というところが多いんですけれども、やはりそういうクラブの想いを、覚悟を私自身も持たないといけない、この戦いに臨むのに覚悟を持って戦わなければ絶対に勝てないと思っています。
――残り9節、ジュビロがジュビロであるための証明をすることへの意気込み、想いをお聞かせください。
ジュビロがジュビロであるためにということは、常勝、常に勝つというのが、ジュビロがジュビロであることだと。「ジュビロ磐田」というクラブは静岡、磐田のシンボルだと思うんですけれども、県民や市民の皆さんに力を与える、ファン・サポーターに対して、勝っても負けても最後まで粘り強く、最後全員が倒れるくらい闘うことが、我々がやることかなと思います。優勝しているときというのは、多分本当に闘い抜いて、常に勝利を得ていたんじゃないかなと。私は今ゴンさん(中山雅史コーチ)と仕事をしていますけれども、常にそういう強い気持ちというのを、普段話をしていても、トレーニングを見ていても感じますし、サッカーの技術・戦術的なところではなくて、そういうところがジュビロであるために必要になってくるのかなと思うので、残りの試合はそれをファン・サポーターに見せたいなと思います。
小野勝 代表取締役社長 質疑応答
――現場から補強のリクエストがあったと思うのですが、それができずに現場が苦しんでいるように見えている状況です。
補強は全然していないわけではありませんし、予算については3年前の監督交代時以上のものを準備してました。
6月のウィンドーがオープンする前からフリーの選手、オープンしてからも様々な選手と交渉していく中で、伊藤前監督が求めたものは今のチームの中での戦術理解、チームのコンビネーションでした。伊藤前監督からのリクエストとしては、「J1リーグの経験者」以外は今チームに入るとチームの練習の中でのバランスが壊れてしまうことが非常に怖いと。そこをヒアリングしながら、ピンポイントで何人かの選手のリクエストをいただきました。J1リーグの中の一定レベルの選手ですから、鈴木秀人前トップチームマネジメント部長は苦労しながら、一人ずつチーム、選手と交渉を重ねながら進めていました。
取ってほしいのはこういう選手、それよりも今の選手達と戦術理解を高めながら、まだまだレベルを上げていくんだというのが今回の趣旨でした。そういう状況でしたので、なかなかそれは外には発信できませんでしたけれども、もちろん外から見れば、無得点で4連敗してるわけですから、そんなこと言ってる場合かと。そう言われても不思議ではないと思います。
ただ我々としては、今年はこの監督で一年やるんだと、それを信じて任せたんだと。そういうことを踏まえてそれを一番リスペクトして、それを一番大事にできる環境をどう作ってあげられるのかと。そこでこういう選手が欲しいといったことに対して準備してあげられなかったのは、ジュビロの力不足です。そういう部分は否めません。
――補強以外で、ここまで苦戦していると思う原因は?
いろんな部分があると思うのですが、一つはJ2優勝してJ1へ上がってきて主力選手達もある程度残したうえで、必要なところを補強して、ただやはり一番最初のところで、スピードであったり、強度であったり、切り替えの速さであったり、J1のプレーに対する対応がうまくできていなかった部分があると思います。
もう一つは伊藤前監督が来たときに、昨年の我々は失点が多い、その守備面をJ1の中で整備して戦っていきたいという状況でスタートして、我々はそこに対しての補強もしたつもりでいたんですけれども、失点を減らすことができませんでした。
またシステムそのものを変えようとしているわけですから、ある日コロッと変えられるわけじゃない。それに対して、伊藤前監督の考えるチームの戦い方をみんなが必死になって吸収しながら、ものにしていこうとする最中、その中には一歩進んで、下がってを繰り返して、それを変えていく苦しみというのが一番苦戦した理由かなと考えています。
――サポーターからのピッチに向けての応援、クラブに対しての問題意識という2つの点に、今後どう向き合っていくか?
会社そのものがこの先どのような方向性に向かって進もうとしているのかは、この先のフットボール本部体制について明確に人選が終わった段階で、記者会見を開かせてもらおうと思っています。
この先ジュビロはどういう方向を目指しているのか、このままエレベータークラブで終わってしまってはどうしようもない、我々としては5年先、10年先、20年先に向けて、クラブが30年を経たなかでやってきたことを棚卸しながら、この先どういう方向性を目指してやっていくのかということを、いままさしく会社全体としてやっている最中です。その中で、一つの切り口として今回フットボール本部の方向性をお示しする機会を改めて取らせていただきます。
サポーターの皆様には本当に感謝しかありません。いろんなメッセージも見させていただいています。我々が発信することでのチームに対する影響など、いろいろなことを考えながら発信をしなければいけないものですから、リアルタイムで今の状況を次々とお伝えできるわけではない、これは本当に申し訳なく思っています。ファン・サポーターの方々には消化不良と思われるのは致し方ないんですけども、そういう中で今日のような記者会見をやれるタイミングをうまく見計らいながら、発信させていただければと。
――フットボール本部が今後どういう風に機能していくかというところの現段階での考えは?
フットボール本部という大きなくくりにしながら、トップチームの下に育成・普及がいて、我々としてはジュビロのフットボールをピラミッドのなかでどういう風に考えていくのか?と。トップチームからスクールまでをこの地域の中でしっかり根差しながら、どう広げていくのか、その大きなプランニングができる人材、ここの人材は数年単位で代わっていくレベルではだめなんです。
長い視点で自分で絵を描きながら、なおかつ下についた人間とともに5年10年かけて階段を一歩ずつ登っていかないと先には到達しません。そういうプランニングができ、それがDNAとして残っていく。そういう組織と人材をうまくもっていきたいと考えています。